フルオーディション Vol.5『エンジェルス・イン・アメリカ』感想

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基本情報
  • 観覧日:第一部 2023年5月21日(日)昼公演
        第二部 2023年5月25日(木)夜公演
  • 会場:新国立劇場小劇場
       第一部 2階バルコニー列センターブロック
       第二部 1階D1列センターブロック
  • 公式サイト:エンジェルス・イン・アメリカ|新国立劇場
  • 作:トニー・クシュナー 翻訳:小田島創志 演出:上村聡史
  • 出演:浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、鈴木 杏、那須佐代子、水 夏希、山西 惇

すべての出演者をオーディションで決定する新国立劇場の「フルオーディション企画」第5弾。
第一部は1991年、第二部は1992年にブロードウェイで初演され作者のトニー・クシュナーはピュリッツァー賞も受賞しています。2003年にはアル・パチーノやメリル・ストリープ出演でテレビドラマ化もされています。
今回は、第一部は、第二部が一挙に上演されました。

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これまでの新国立劇場フルオーディション企画

第1弾『かもめ』作:チェーホフ 演出:鈴木裕美(2019年4月)
第2弾『反応工程』作:宮本研 演出:千葉哲也(2021年7月コロナで延期)
第3弾『斬られの仙太』作:三好十郎 演出:上村聡史(2021年4月)
第4弾『イロアセル』作・演出:倉持 裕(2021年11月)
第5弾『エンジェルス・イン・アメリカ』作:トニー・クシュナー 演出:上村聡史(2023年4月)
第6弾『東京ローズ』初のミュージカル 作・詞:メリー・ユーン/キャラ・ボルドウィン 演出:藤田俊太郎(2023年12月)

感想

長いですが、第二部までぜひ観てほしい

第一部3時間半、第二部4時間で休憩はともに2回ずつと、かなりの長丁場ですので、第一部だけでも十分満足感はあるのですが、まだまだ話が導入部分のところがあり(なんといっても天使が出てきたところで終わりだし)、カタルシスを得るためにも絶対第二部まで観たほうが良いですね。
ただ、一日で観るのは長いので、私は二日に分けて正解でした(席の良しあしにもよる)。

カフェのビールとパンフレット

8人の役者ですべての役を演じ、女性が男性役や老人役を演じることも。これだけ長い舞台をしかも複数の役を演じる役者の皆さんは本当にすごいなあというのと、やりがいもあるのだろうなと。
ちなみに観ていてスムーズでなかったりセリフ噛んだ?と言ったところなども一切ありませんでした。ほんとすごい。
エイズ罹患者ということもあり、プライヤー役の岩永さん、ロイ・コーン役の山西さんはものすごく痩せられたそうですね。それでもモデル出身の岩永さんは良い身体。この芝居はかなり転機になられたのではないでしょうか。

キャラの濃い天使を演じる水さんはあの声と、姿と、はまり役。この本の中の大切な役柄である天使を説得力もって作り上げていました。

鈴木杏さんは、声大きいですねえ。いやあ、持っていきます。劇中のほとんどが不思議ちゃんなので、声を張る役なところもあるかとは思いますが、でか!っと。(笑)

山西さんも力入っていましたね。唯一実在の人物(ロイ・コーン)で、ただ一人死んでいきます。どうやって死んでいくのかなと思って観ていましたが、最後までロイ・コーンでした。

ベリーズとハンナはいいですねえ。浅野さんのベリーズは看護師というだけでなく人としてものすごく頼れる安定感があり(浅野さんは全然元ドラァグクイーンぽくないのにぴったり)、田舎から出てくるハンナも母親というだけでなく頼れる肝っ玉な人であり、さらに自分もニューヨークで新しい人生を歩み始めているのが見えてかっこよかったです(信者としてか義母としてか人としてかのハーパーへの愛も)。唯一好きになれなかったのがジョーでした。役者さんのせいではなく、役柄が嫌い!ルイスでさえどうしても憎み切れないところがあるのになあ。劇中でも寂しかったですね。自動自得と思っちゃいますが。

80年代ミュージック

当時の楽曲がいろいろ使われています。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ホット・スタッフ、A-ha、ボーン・イン・ザ・U.S.A.などなど。初演当時はリアルだったのでしょうが、今ではすっかり懐メロで楽しいです。

80年代ミュージックは、とてもキャッチ―で分かりやすく、一発屋も多い印象ですが(笑)、聞けばすぐにその時代やエピソードを思い出せる音楽がたくさんある時代ですね。音楽としても特殊な時代だったのかと思います。50年代60年代ほど昔ではなく、現代と地繋がりでありながら、クラシックとして残るかというと全くそういう扱いは受けてないポップス感ありありの音楽たちはなんだかんだで時代を彩り人々に愛される他にはない音楽だったなあと思います。

当時を思い出してみる

若い人にとっては昔の病気であるエイズですが、現在のコロナのパンデミックで重なる部分があるといわれています。ただ、実際にエイズが恐怖をまき散らしていた時を知っている私としては、エイズという病気への恐ろしさはコロナの比ではありませんでした。
もちろん、コロナは死ぬ可能性があり、医療ひっ迫時は死ぬはずがないのにという恐ろしさがありましたが、エイズに罹る=死でした。
でもそれは、多くの日本人にとっては外国の出来事、ゲイの人たちの病気、という対岸の火事的な意識が大きかったかとも思います。それはアメリカでも同様だったのでしょう、アメリカのゲイコミュニティの人々にとって、あれで済むはずがないのではと思ってしまいます。コロナだって、地方の人や若い人にとっては対岸の火事でしたでしょうし、多くの偏見や差別もありました。
しかしそこは突拍子もないファンタジーを使って、あえてしつこく描かなかったのがこの芝居の肝なのでしょうね。それを体現するプライアーはなくてはならない面白いキャラクターでした。
どんなに病を抱え、悩みを抱え、苦しくて、痛くても、「生きたい!」そうして前向きに生きていこうと思います。

東京会場は新国立劇場小劇場

第一部は2階席(バルコニー)、第二部は1階席センターブロックで観ました。
小劇場なので問題ないかと思いきや、段差が低く前の人の頭かぶりがかなりおきますね。
2階席は柵が舞台を横切りますが、かなりリーズナブルなので納得です。
詳細は下記をどうぞ。

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